【2023年9月判決】夫婦の婚姻費用未払い問題と裁判所の判断基準をわかりやすく解説

夫婦間の婚姻費用に関する合意があっても、その内容が固定的に確定されるわけではなく、夫婦の収入や生活状況に応じて変動し得ることが最も重要なポイントです。

令和5年(2023年)9月の最高裁判決により、家庭裁判所は合意の有効性にかかわらず、婚姻費用の分担内容を新たに形成できると明確に判断されました。

えらぶーと先生

一度決めた婚姻費用の合意って、後から変更できるの?

えらぶーと先生

婚姻費用は収入や生活状況の変化に応じて見直しできるため、家庭裁判所の審判で新たな分担内容を決められます

事件の概要と裁判所の判断基準

夫婦間の婚姻費用に関する合意があっても、その内容が固定的に確定されるわけではなく、夫婦の収入や生活状況に応じて変動し得ることが最も重要なポイントです。

裁判所はこの点を重視し、合意の有効性にかかわらず、家庭裁判所が婚姻費用の分担内容を新たに形成できると判断しています。

事件の正式名称、裁判所、判決日の紹介

本件は「婚姻費用の合意無効確認請求事件」として、最高裁判所において令和5年(2023年)9月4日に判決が下されました。

第一審は東京地方裁判所、原審は東京高等裁判所で審理されました。

夫婦の基本状況と婚姻費用の合意内容

夫婦は平成19年に結婚し、2人の子どもと共に生活していましたが、平成28年から別居状態となり、子どもは妻と同居しています。

平成29年1月に夫は妻に対し、生活費として毎月16万円を支払うことで合意しました。

この合意に基づき、夫は令和4年8月まで支払いを続けましたが、その後未払い分が発生しました。

婚姻費用分担審判の申し立てと裁判の流れ

令和2年11月、妻は家庭裁判所に婚姻費用分担審判を申し立て、令和4年9月に審判が下されました。

この審判では、令和2年11月から令和4年8月までの未払い婚姻費用284万円の支払いと、同年9月以降は月額29万円の婚姻費用支払いが命じられました。

妻は合意の無効確認を求めて訴訟を提起しましたが、第一審は確認の利益がないとして訴えを却下し、原審は確認の利益を認めて差し戻しました。

最高裁は合意無効確認訴訟は不適法と判断しました。

裁判所が重視した判断基準の概要

裁判所は婚姻費用が夫婦の経済状況や生活環境により変動し得ることを重視し、合意によって固定されるものではないと判断しました。

家庭裁判所は合意の有効性にかかわらず、全事情を考慮して婚姻費用の分担内容を新たに形成できる権限を持ちます。

合意の有効性を別途民事訴訟で確認することは、紛争の直接的かつ抜本的な解決に適さないため、合意無効確認訴訟は不適法とされました。

ここまでのポイント

えらぶーと先生

婚姻費用は状況に応じて変わるため、家庭裁判所の審判が主な解決手段です

問題となった対応・争点の詳細

婚姻費用合意の内容と支払い状況

夫婦は平成29年1月に、被告(夫)が原告(妻)に対し月16万円の生活費を支払う合意をしました。

この合意は別居開始後の生活費の支払いを目的としたもので、被告は令和4年8月まで毎月16万円を支払っています。

しかし、令和2年11月以降に未払い分が発生し、原告は家庭裁判所に婚姻費用分担審判を申し立てました。

審判では未払い284万円の支払い命令と、月額婚姻費用を29万円に増額する決定がなされました。

この合意は当時の被告の年収を実際より低く見積もっており、生活費の分担額を変更すべき事情に該当すると判断されました。

合意の内容と支払い状況は、婚姻費用の実態に合わなくなったため、見直しが求められた経緯があります。

合意無効確認訴訟の提起理由と法的背景

原告は、婚姻費用分担審判の申し立てに先立ち、本件合意の無効を確認する訴えを提起しました。

これは、合意が有効であれば審判による増額が認められない可能性があるため、合意の効力を争う目的で起こしたものです。

しかし、最高裁判所は婚姻費用は夫婦の収入や生活状況に応じて変動し得るものであり、合意によって固定されるものではないと判断しました。

家庭裁判所は合意の有無にかかわらず、全事情を考慮して婚姻費用の分担内容を新たに形成できるため、合意の有効性を民事訴訟で確認することは紛争の直接かつ抜本的解決には適さないとしました。

家庭裁判所による婚姻費用分担審判の内容

家庭裁判所は令和4年9月に審判を行い、被告に対して令和2年11月から令和4年8月までの未払い婚姻費用284万円の支払いと、令和4年9月以降は月額29万円の婚姻費用支払いを命じました。

この審判は、合意が成立した後でも夫婦の収入や生活状況の変化に応じて婚姻費用の分担額を見直すことができるという法的根拠に基づいています。

家庭裁判所は合意の有効性を問わず、婚姻費用の分担内容を新たに形成する権限を持つため、合意内容に拘束されるものではありません。

争点となった合意の有効性と審判との関係

争点の一つは、婚姻費用合意が固定的なものであり、審判による変更ができるかどうかです。

原告は合意の無効を主張し、合意が有効であれば審判による増額は認められないと考えました。

しかし、最高裁は婚姻費用は夫婦の収入や生活状況に応じて変動するため、合意によって固定されるものではなく、家庭裁判所は合意の有効性にかかわらず審判で新たな分担内容を形成できると判断しました。

したがって、合意の有効性を別途民事訴訟で確認することは紛争解決に適さず、不適法とされました。

合意無効確認訴訟の適法性も争点となりました。

第一審は確認の利益がないとして訴えを却下しましたが、原審は確認の利益があるとして第一審判決を取り消し差し戻しました。

最終的に最高裁は、婚姻費用の分担は家庭裁判所の審判で新たに形成されるため、合意の有効性を確認する訴えは紛争の直接かつ抜本的解決に適さず、確認の利益を欠くとして不適法と判断しました。

これにより、合意無効確認訴訟は認められません。

ここまでのポイント

裁判所の判断とその理由

婚姻費用の分担は、夫婦の収入や生活状況に応じて変動するものであり、合意によって固定されるものではない点が最も重要です。

これにより、家庭裁判所は合意の有効性にかかわらず、全ての事情を考慮して新たに婚姻費用の分担内容を形成できます。

婚姻費用は状況に応じて変動し得る性質

婚姻費用とは、夫婦や子どもの生活に必要な費用を指し、収入や生活環境の変化により増減します。

裁判所は、婚姻費用が固定的な金額ではなく、状況に応じて見直されるべきものであることを強調しました。

例えば、収入が増えれば支払うべき婚姻費用も増え、逆に減れば減額されます。

これにより、夫婦の公平な負担が維持されます。

家庭裁判所の審判による新たな分担内容形成の権限

家庭裁判所は、婚姻費用に関する合意が存在しても、その有効性にかかわらず、夫婦の現在の収入や生活状況を踏まえて婚姻費用の分担内容を新たに決定する権限を持ちます。

これは、合意が固定的なものではなく、変動する事情に対応するための柔軟な制度設計です。

審判では、未払い分の支払い命令や月額婚姻費用の増額など、実態に即した内容が形成されます。

合意無効確認訴訟が不適法とされた理由

婚姻費用合意の有効性を民事訴訟で確認することは、婚姻費用分担の紛争を直接かつ抜本的に解決する方法として最適ではありません。

裁判所は、合意の有効性確認を求める訴えは「確認の利益」を欠くとして不適法と判断しました。

これは、合意の有効性にかかわらず、家庭裁判所が審判で分担内容を形成できるため、別途訴訟で合意の効力を争う必要がないためです。

第一審から最高裁までの判断の流れと結論

最高裁判決は、婚姻費用合意は状況に応じて変動するものであり、合意の有効性確認を別途民事訴訟で争うことは認められないと明確に示しました。

これにより、家庭裁判所の審判手続が婚姻費用分担の主たる解決手段であることが確定しました。

えらぶーと先生

婚姻費用は固定的な合意で決まるものではなく、家庭裁判所の審判で新たに決められるため、合意無効確認の訴訟は認められません

生活者視点で知るべきポイント

夫婦間の婚姻費用に関する合意は、一度決めた内容が固定されるものではなく、状況に応じて見直しが可能であることが最も重要です。

生活費や収入の変化に伴い、婚姻費用の分担額は変動するため、柔軟に対応できる仕組みが必要とされています。

婚姻費用合意は固定的でなく見直し可能なこと

婚姻費用合意は、夫婦の収入や生活状況が変わると、そのまま維持されるわけではありません。

裁判所も合意内容を絶対視せず、必要に応じて新たな分担内容を形成します。

たとえば、収入が増えたり減ったりした場合には、婚姻費用の額も変わるため、合意後でも見直しが認められます。

えらぶーと先生

婚姻費用の合意は一度決めたら変えられないの?

えらぶーと先生

婚姻費用の合意は固定されず、生活状況の変化に応じて家庭裁判所が見直しを認めます

家庭裁判所の審判が主な解決手段であること

婚姻費用の分担に関する争いは、家庭裁判所の審判手続が基本的な解決方法です。

合意があってもその有効性を争う場合や、合意と異なる分担を求める場合は、家庭裁判所が夫婦の収入や生活状況を総合的に判断し、新たな分担内容を決定します。

審判は迅速かつ実情に即した解決を目指すため、利用しやすい制度です。

合意の有効性を別途訴訟で争うことの制限

婚姻費用の合意が有効かどうかを別の民事訴訟で争うことは、基本的に認められていません。

最高裁判決により、合意の有効性確認訴訟は「確認の利益」を欠くため不適法とされ、家庭裁判所の審判手続で解決すべきとされています。

つまり、合意の効力を争うために別途訴訟を起こすのではなく、まずは審判に申し立てることが必要です。

収入証明や生活状況の変化が重要な理由

婚姻費用の見直しには、夫婦の収入や生活状況の変化を証明する書類が欠かせません。

収入証明書や生活費の実態を示す資料を提出することで、裁判所は適切な分担額を判断します。

収入の増減や別居の状況、子どもの養育費の必要性などが具体的に示されることで、公正な審判が可能となります。

調停や審判手続の利用と専門家の助言の必要性

婚姻費用の問題は感情的になりやすく、話し合いが難しい場合が多いため、調停や審判手続を活用することが望ましいです。

これらの手続は裁判よりも柔軟で迅速に解決を図れます。

また、弁護士や家庭裁判所の相談員など専門家の助言を受けることで、手続の流れや必要書類の準備がスムーズになり、不安を軽減できます。

えらぶーと先生

調停や審判ってどうやって利用すればいいの?

えらぶーと先生

調停や審判は家庭裁判所で申し立てでき、専門家のサポートを受けながら進められます

生活者として押さえておくべきポイントをまとめます。

これらを理解することで、婚姻費用に関する問題が起きた際に冷静に対応でき、適切な手続きを選択しやすくなります。

最新の裁判動向と本判決の意義

夫婦間の婚姻費用に関する裁判では、収入の変動を反映して婚姻費用を算定する傾向が強まっていることが重要です。

収入が変われば生活費の負担割合も見直されるため、裁判所は最新の収入状況を重視します。

婚姻費用算定に収入変動を反映する傾向

婚姻費用は夫婦の収入や生活状況に応じて変わるため、固定的な合意に縛られず、変動を反映した分担が認められています。

令和5年9月の最高裁判決では、合意があっても家庭裁判所が収入変動などの事情を踏まえて新たに分担内容を形成できると明示されました。

これにより、収入証明の提出や生活状況の変化が婚姻費用の見直しにおいて不可欠な要素となっています。

離婚原因や慰謝料請求における証拠の重視

離婚や慰謝料請求の裁判では、浮気やDVなどの離婚原因に関する証拠提出が極めて重要です。

裁判所は精神的苦痛の具体的な証拠を基に慰謝料の額を判断し、証拠が不十分な場合は慰謝料の減額や不認定としています。

これにより、証拠の有無が裁判結果に大きく影響します。

家庭裁判所の審判手続の役割と利用しやすさの向上

婚姻費用の分担に関しては、家庭裁判所の審判手続が主な解決手段として機能しています。

合意の有効性にかかわらず、審判で新たに婚姻費用の分担を決定できるため、別途の合意無効確認訴訟は不適法と判断されました。

これにより、審判手続の利用が促進され、生活者にとって利用しやすい環境が整備されつつあります。

本判決は婚姻費用分担の審判手続の明確化を示し、生活者が安心して家庭裁判所の審判を利用できる環境を整えました。

これにより、婚姻費用の未払い問題や分担割合の見直しがスムーズに行われることが期待されます。

えらぶーと先生

ここまでのポイント

よくある質問(FAQ)

婚姻費用の合意は一度決めたら変えられないのでしょうか?

婚姻費用の合意は固定的なものではなく、夫婦の収入や生活状況の変化に応じて見直しが可能です。

家庭裁判所は合意の有効性にかかわらず、全事情を考慮して新たな分担内容を決められます。

婚姻費用の未払いがあった場合、どのように対応すればよいですか?

未払いが発生した場合は、家庭裁判所に婚姻費用分担審判を申し立てることが基本です。

審判では未払い分の支払い命令や、必要に応じて婚姻費用の増額が認められます。

婚姻費用の合意が無効かどうかを裁判で争うことはできますか?

婚姻費用の合意の有効性を別途の民事訴訟で争うことは認められていません。

最高裁判決により、合意の有効性確認訴訟は「確認の利益」を欠くため不適法と判断され、家庭裁判所の審判手続で解決すべきです。

離婚や慰謝料請求の裁判で重要なポイントは何ですか?

離婚原因となる浮気やDVの証拠提出が非常に重要です。

精神的苦痛の具体的な証明が慰謝料の額に影響し、証拠が不十分な場合は慰謝料が減額または認められないことがあります。

婚姻費用の分担額はどのように決まりますか?

婚姻費用の分担額は夫婦の収入や生活状況を基に算定されます。

収入の増減や別居状況、子どもの養育費の必要性などが考慮され、家庭裁判所が適切な分担割合を決定します。

婚姻費用や離婚問題で裁判所の手続を利用する際のポイントは何ですか?

調停や審判は裁判より柔軟で迅速な解決を目指す手続です。

専門家の助言を受けながら進めることで、必要書類の準備や手続の流れがスムーズになり、不安を軽減できます。

家庭裁判所で申し立てが可能です。

まとめ

この記事では、令和5年9月の最高裁判決をもとに、夫婦間の婚姻費用の合意が固定的なものではなく、収入や生活状況の変化に応じて見直しが可能であることを最も重要なポイントとして解説しています。

家庭裁判所は合意の有効性にかかわらず、審判で新たな分担内容を決められるため、婚姻費用の問題は裁判所の審判手続が主な解決手段となっています。

婚姻費用の問題に直面した際は、まず家庭裁判所の審判手続を利用し、収入や生活状況の変化を証明する書類を準備することが大切です。

専門家の助言を受けながら進めることで、より適切な解決が期待できます。

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